一行クソブログ

ブログを習慣化するためのスモールステップとして1行書いたらOKとするブログをやってます。

死刑囚の記録 加賀乙彦

こんばんは

書くこと自体久しぶりですが、話題としても久しぶりに読んだ本の感想を書いていきます。

今日紹介する本は

 

死刑囚の記録 (中公新書 (565))

死刑囚の記録 (中公新書 (565))

 

 です。

題名の通り、筆者がかかわってきた死刑囚について書かれた本です。

この本の何より素晴らしいと感じたことは、努めて主観を排して書かこうとなされていた点です。

死刑囚は様々な議論を引き起こす存在です。死刑は存続させるべきか、死刑を執行する側の精神状態のケアも考えるべきだ等、様々な問題提起ができる存在になっています。

しかし、この本の中ではあくまで精神科医である筆者が見て、精神科医であるという立場から逸脱しないように淡々と書かれていました。

このおかげで、余分な(もちろん前に挙げた問題が重要ではないといっているのではなくこの本の主題からはそれているということでこの言葉を使っています。)主義主張が排され、読む私の心にスーっと入ってきて死刑囚という立場の人間の苦しみや葛藤をより鮮明に感じることができました。

 

内容についての感想に入っていきます。

この本を読んでみると、死刑囚というのは、私たちと全く別世界の人間ではないと思いました。

彼らは閉鎖された空間によるノイローゼに苦しみ、自傷行為、被害妄想、躁状態による多動多弁がありました。

本ではこれらのことで苦しんでいる死刑囚がより鮮明に書かれています。

その状態を思い浮かべると、同情、哀れみ、共感こそ思い浮かべたものの軽蔑や嫌悪感はそれほど抱きませんでした。

もちろん、このノイローゼで苦しんでいる死刑囚は人を殺めた罪人で、可哀そうだから出してあげようと単純に言うことができる存在ではありません。

ですが、苦しんでいる彼らを見ていると、時に閉塞感を感じ苦しんでる自分と重なる部分がありいたたまれなくなるのです。

 

以上のことより、この本は死刑囚という枠組みを超えて、社会などに閉塞感を感じる人に深い感動を与える本だと私は思いました。

ハウツー本の類ではないので、こうしたらよくなるよとか解決策が乗っているわけではないですが、自分の苦しさに多角的な視点を与えてくれと信じています。

 

ここから、話は脱線しますがこの本を読み終えた後、私は生き生きとした本を読むのが好きなんだと感じました。

今回の本のように、筆者の体験が淡々と、しかし克明に感じられるような本はいっぺんに読んでしまいます。

一方で、論文やある事柄の解説本は筆者の体験、感動が希薄のように感じられ読むのが苦しく、読んではやめを繰り返してしまいます。

今後本を選ぶ際は、そういったことを留意しながら選ぶと自分の好きな本に巡り合えることも加賀さんの本から学ぶことができました。

この本を購入してよかったです。

それでは